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 地域にとって本当に必要な医療とは—
 救急医療の視点から、地域医療のこれからを考える

全国DPC対象病院のなかで、救急医療No.1の実績。

P12-1グラフ.jpg 別の角度から、馬場記念病院の実績を見てみよう。今年3月19日、厚生労働省から平成22年度のDPC対象病院の「機能評価係数Ⅱ」が告示された。「機能評価係数Ⅱ」とは、平成22年度より導入された、DPC対象病院について評価する新しいルールである。
 具体的には、「データ提出指数」「効率性指数」「複雑性指数」「カバー率指数」「救急医療係数」「地域医療指数」の6項目から算出され、係数が大きい病院のほうが「医療機能が高い」と評価される。
 この「機能評価係数Ⅱ」の告示で、馬場記念病院は全国のDPC対象病院(1334病院)のなかで、12位にランクインした。これはもちろん、堺市ではトップ、大阪府下でも3位の実績である。
 「DPCを導入することにより、病院の診療実績が可視化されるようになることは想定していました。それがようやくオープンな形で公表されるようになって、私たちとしても自分たちの実力が評価されたものと、うれしく受け止めています。また、こうした情報のオープン化は、医療を受ける患者さまにとっても、大変良いことではないでしょうか。自分自身や家族が病気になったとき、やはり、診療実績の豊富な病院を選びたいというのが、一般的な市民感覚だと思います」と田中は評価する。
 さらに、機能評価係数Ⅱの中の「救急医療係数」だけを見ると、馬場記念病院は全国最高の数字となる。救急医療係数とは、簡単にいうと、緊急入院患者さまとすべての入院患者さまの入院2日目までの治療にかかった費用の差額を計算し、病院ごとに評価するもの。診断群分類と緊急患者さまの数に応じて、評価の度合いは異なる。緊急入院の場合、予定入院に比べて、診断を下すまでの初期治療にコストがかかるため、その部分を診療報酬でカバーするために考えられた係数だ。この係数が高いということは、それだけ多くの救急患者さまを受け入れ、充分な医療スタッフを投入して一生懸命に取り組んでいることを表すものといえるだろう。
 田中は言う。「一般的な二次救急医療機関では、当直医の数は1〜2名というところが多いようですが、当院では内科、外科に加え、脳神経外科、整形外科、(脳)神経内科、の医師5名が当直しています。それだけの人材を投入するには、当然人件費がかかります。その部分を一部でもフォローできる評価係数が導入され、正直、大変ありがたいと感じています」。

DPC対象病院と機能評価係数

DPCとは、Diagnosis Procedure Combination の略で、それまでの診療行為ごとに計算する出来高払いとは異なり、入院患者さまの傷病(診断群)ごとに定額の入院治療費が標準的に算定されるもの。医療をむだなく効率的に提供できる仕組みとして、急性期病院の必須条件となりつつある。現在、全国のDPC対象病院は、1,334施設。馬場記念病院は平成16年4月からDPC対象病院になった。
機能評価係数Ⅱは、優れた医療機能を持つ病院を診療報酬で優遇するために導入されたもの。従来、DPC導入病院の診療報酬単価は、「調整係数(前年度の収入に応じて算定)」などによって差がつけられていたが、必ずしも各病院の診療実績に基づくものではなかった。そこで、調整係数を段階的に廃止し、2010年度診療報酬改定から、救急医療や地域医療への貢献なども加えた新たな「機能評価係数Ⅱ」を導入することが決定された。

緊急手術は昼夜を問わず24時間体制。

P13-1.jpg 馬場記念病院で救急医療の中心的な役割を担っているのは、脳神経外科である。この10年間を見ると、平成12年には、脳神経外科に入院された患者さまは1269人だったが、平成21年ではおよそ1.7倍の2125人に増加。そのうちの脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)の患者さまもほぼ同じ割合で増えている。一つの民間病院で、これほど脳神経外科領域、なかでも脳卒中の救急患者さまを受け入れているケースは、堺市医療圏ではもちろん、全国的に見ても稀な例といえるのではないか。医師や医療スタッフの並外れた努力、そして病院全体のシステムの工夫があるからこそ実現している診療体制といえるだろう。
馬場記念病院副院長・脳神経外科部長の魏秀復医師は言う。
P13-3.jpg 「当院は、脳卒中のなかでも、出血性疾患の患者さまが多いのが特徴です。それは出血性疾患は24時間体制で慎重に容態を観察し、出血が広がれば、即座に緊急手術が必要になるため、他の病院からの紹介転院が多いからです。当院は昼夜を問わず、緊急手術のできる体制を整えているので、それだけ地域の皆さまや医療施設から、頼りにされているのだと認識しています」。
 魏医師の言葉を裏付けるように、脳神経外科の手術件数も非常に多い。この10年間では多少のバラつきはあるが、大学病院レベルに匹敵する手術件数だ。手術数が多い、ということは何を表しているのか。それは医師の技量の高さに結びつくものであり、看護師などの医療スタッフの充実、術後のフォローなどを含めた病院全体の質の高さも物語る。地域において、脳卒中の中心的な病院として、馬場記念病院は存在しているのである。

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24時間、緊急手術ができる病院だからこそ可能なt-PA治療。

脳梗塞の治療法として注目されるt-PA治療。t-PAとは脳血管に詰まった血の塊を溶かす薬で、血流を早く再開できれば、それだけ後遺症を減らし、社会復帰できる確率が上昇する。馬場記念病院では、t-PA治療の認可とともに積極的に取り組み、実績を重ねてきた。しかし、「t-PAは両刃の剣である」と魏医師は警鐘を鳴らす。「t-PAは劇的な効果が期待される反面、血流が再還流したときに出血性梗塞という病態になり、脳出血除去術が必要になることがあります。従って、万が一の迅速な外科的処置が保証されていなくては決して使ってはいけない薬なのです」。そのため、t-PAを使うには厳しい施設基準が設けられている。馬場記念病院は、t-PA治療を24時間いつでも行える数少ない病院の一つなのである。
また、t-PAの使用には、発症3時間以内という制約がある。この制約をクリアするためにも、馬場記念病院では、救急隊が脳神経外科の医師に直接電話できる「脳卒中ホットライン」を設け、一刻を争う患者さまの受け入れに懸命に取り組んでいる。

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